碩星楼ブログ
再演のリワーク理念をまとめてお届け

再演のリワーク理念をまとめてお届け

Author: BakaFire

 こんにちは、BakaFireです。

 いよいよ明日、『桜降る代に決闘を 再演』はシーズン1-2へと時代が進みます。本日はそれに向け、ウツロに関する記事をまず書こうと思い、筆を執らせていただきました。

 しかし実際に書き始めてみて、よりよい考えが浮かびました。ウツロは再演においてリワークが行われているメガミです。それに加え、今回のカード更新では再演の『基本/達人セット』でリワークされたメガミのカードについても更新が考慮されています。

 これを踏まえると、そもそものリワークとは何であるのかをお話ししたほうが、様々な面で見通しが良くなると言えそうです。そこでよりデザイナーズノートに近い方向の記事として、再演でリワークされたオボロ、ハガネも交え、リワーク全体について書かせていただくことにしました。

 リワークとは何なのか。そして彼女らの根底に息づいていた理念と、それを実現し直すための考察をお楽しみいただければと思います。それでは、さっそくはじめましょう!

リワークとは

 まずはリワークとは何であり、どのような意味があるかを説明します。

 リワークとはメガミの理念を見直し、カードプール全体を大きく整え直すことを指します。即ちリワークは強化でも弱化でもありません。意図していた体験や設計し直した体験を実現させるための再実装です。

 見直すと言っても、もちろん全てを捨てるわけではありません。新幕の時点で全てのメガミは十分魅力的であり、これで完成としてもゲームとしては十二分に一人前です。しかし深いレベルまで振り返ると、結果的には失敗だったところは残されています。

 それらの失敗は根深い位置にあり、シーズン単位でのカード更新では枚数面の理由で是正が困難でした。例えば1柱のメガミに9枚のカード更新が一度に出ようものなら、製造コストの問題も、プレイヤーの混乱も無視できない大きさになります。

 そしてリワークを行ったメガミたちは、それらの問題を押してまで行うほど悪い出来ではありません。むしろ先ほども申し上げた通り、十二分に一人前だと呼べるほど面白い仕上がりです。

 ですが、再演という場ならば11枚中9枚のカードに変更が行われても全く問題ありません。そこで私どもは再演を機会と考え、『基本/達人セット』ではオボロとハガネにリワークを行い、そして今回はウツロに行ったのです。

 リワークが求められる困難さの理由はメガミごとに異なり、リワークの規模もまちまちです。それらについてせっかくの機会ですので、この場にてそれぞれ説明いたしましょう。

オボロのリワーク

 オボロのコンセプトは都々逸にて歌われている通り「伏せて仕込んで利得を稼ぎ、罠に嵌める」ことです。

 伏せ札に特定のカードがあるか否かのやり取りで罠の緊張感を与えながら、オボロを宿す側は基本動作により小さい利得を稼ぎ続け、そして上手く罠に嵌めた際の利益で勝ちに向かうのです。

 設置を軸としたこのコンセプトは『第二幕』後半あたりで間合とのやり取りがうまく行った時点で機能し始め、『新幕』では(一部の愚かなカードでの過ちをさておけば)初期から魅力的に働いていました。

 しかし、いつの頃かは判然としませんが、設置との蜜月はどこかで壊れてしまっていました。理由はカードパワーのインフレーションです。本作が楽しさを提供し続けていく面で、インフレーションと賢く付き合うことは必要不可欠ですし、インフレーションそのものは悪ではありません。しかし、設置の間には明確な相性の悪さがありました。

 カード1枚1枚が強くなるほどに、相対的に基本動作は弱くなります。その結果、本作は可能な限りカードを表で出すことが正しいゲームに近付いていきました。それ自体も悪ではありません。しかし、カードを伏せる行為そのものが弱くなると、「カードを伏せたのに設置を使えなかった」パターンもまた、ゲームプランとして看過できないほどのリスクに近づいてしまうのです。

 結果として最終的にオボロは「鋼糸」を強い2/2として普通に使い、「影菱」の極端な効果を通して1枚の伏せ札で脅しをかけるメガミになってしまいました。及第点の楽しさはあると評価しています。しかし、かつて目指したオボロの楽しさはいつからか失われてしまったとも感じます。

 そこで設置全体におけるリスクとリターンのコンセプトを設計し直し、「分身の術」のように伏せ札の作成を助けるカードを用意しました。

 現状として以上の目的は果たされ、オボロのリワークは成功したと評価しております。

ハガネのリワーク

 ハガネには『第二幕』時点での過ちがあり、強くなれない呪いが根深くこびりついていました。それは「対応を持たない」というキャラクター性です。

 9年前はデザインの技術もまったくもって未熟であり、性格や物語から安直に対応を持たない性質を定めてしまいました。さらに『第二幕』初期でのトコヨの強さから「遠心撃」が自分の手札を伏せるカードとして設計され、『新幕』でそれを踏襲した時点で、ハガネは対応を持ちえないメガミで確定してしまったのです。

 しかし遠心は開発初期の我々の想像を大きく超え、弱みの大きいキーワードでした。

 その分だけ派手なテキストは書けます。『第二幕』時点では恐る恐る書かれた5/2は、今や終端だけで5/3でも問題ないと解明されました。それでもリスクが大きく、扱いにくいカードです。

 一方でハガネが目指した体験を振り返りましょう。もちろん「パワーを溜めて、どっかーん!」です。ゆえに力を溜め、バフを重ね、ビッグコンボを叩き込めるようカードプールは設計され続けています。

 しかし問題がありました。ビッグコンボを決めるには十分な守りが必要不可欠だったのです。その際、対応を持たないという個性はハガネを大いに苦しめました。私どもは対応以外の多彩な妨害をハガネに組み込み、何とかメガミとして成立するよう調整しました。「遠心撃」は相手の手札を捨てさせ、フレア破壊や間合の妨害を強め、対応不可の確実性でリスクを引き下げました。

 そのようにして成立させた形は全てが極端でした。ゆえにここから一歩さじ加減を間違えれば「大山脈リスペクト」での過ちのようにゲームが壊れ、しかしそれでも新幕最終段階では活躍が不十分だという、どん詰まりに行きついてしまったのです。

 ハガネはこのままでは強いメガミになれない。私はそう結論付けました。

 そこで私はハガネのコンセプトを点検し直しました。そして結論として「遠心によるビッグコンボと対応を持たない主義は相性が悪かった」「ビッグコンボはコンセプトだが、極端な妨害や押し付けはコンセプトではない」と判断し、対応カードを与える代わりに妨害や押し付けの性能を引き下げるよう全体を整え直しました。

 再演でのハガネのリワークは大成功だと評価しております。

 一方、調整の中で幾つかの要素で慎重になりすぎたとも考えております。ここから環境を通した活躍の度合いを踏まえ、更新を検討し続けていく見込みです。明日のカード更新でももちろん検討されております。

ウツロの参戦とリワーク

 ウツロの誕生は2017年の『第二幕』です。その頃の本作は第参拡張で完結させる前提で開発されていました。そこで当時、ウツロは間合の穴埋めとして遠距離で設計され、それは『新幕』でも踏襲されました。

 しかし一方で『新幕』を開発する際には、メガミごとに宿した際の体験を言語化する形で理念が設計されました。ユリナならば主人公気分、サイネならば好敵手気分、クルルはもちろん発明家気分といった具合です。

 そしてウツロは何だったかというと、魔王気分でした。

 魔王気分とはどういう体験でしょうか。私はそれを相手へのネガティブな効果と、相手に選択肢を提示する試練の感覚として表現しました。例えば「魔食」や「重圧」は特に分かりやすいでしょう。この類の効果を前にした時、相手は奪われ、苦しめられる感覚を抱きます。

 しかし魔王と対峙する勇者がただ屈してはいけません。勇者には魔王に抗うための選択肢が与えられ、だからこそ知恵を絞って立ち向かうのです。そうした勇者と向き合ったとき、逆説的に魔王の体験が花開きます。

 これをアーキタイプ的に言葉にするなら、リソース破壊コントロールと私は定義していました。『新幕』ではその体験自体は設計通り、確かに存在し、楽しく魅力的だったと評価しています。

 一方、競技的な実情では課題もありました。背景として新幕の『第参拡張』あたりから、中距離のメガミたちを輝かせるための調整が数年間にわたって行われました。そして多くの新メガミやカード更新を経てその面では魅力的なバランスに仕上がり、ビート的な中遠距離の戦略も力強くなりました。

 しかしその結果として、ウツロはリソース破壊コントロールよりも中遠距離メガミと組み合わせた際の短期的な攻撃力・防御力が注目される状況となってしまいました。

 これは数枚だけの更新では是正できません。ウツロ全体の点検と調整が必要です。そして結論として、『第二幕』から踏襲されてきた遠距離らしい位置からより引き離し、間合2を軸とした立ち回りに近付け、よりコントロール的な方向に整え直す必要があると判断いたしました。

 リソース破壊コントロール、そして魔王気分を目指し直したウツロの新しい形をお楽しみいただければ嬉しい限りです。

 おっと、もちろん最後にウツロのカードをご覧いただきましょう。まずは2枚。そしてアナザー版である『終章』ウツロからも1枚をご覧ください。

影の壁

終末

蝕みの塵