【デザイナーズノート】コンポーネントを光らせる理由
剣に焦がれ、悪魔に囁かれた闘士よ。
白き夢の入口へようこそ。
この連載ではBakaFireのデザイナーズノートを通し、『ドリームテーゼ』の断片を幾つかお伝えします。
本日のテーマは「なぜコンポーネントを光らせるのか」です。
前提として、『ドリームテーゼ』はコンポーネントのほぼ全てが光っています。まずは写真たちをご覧ください。




ご覧の通り豪華で、最高に美しい仕上がりになりました。ぜひともゲームマーケットでは当日のブースで実際に手に取り、ご覧になっていただければ嬉しい限りです。
さて、ここからがデザイナーズノートとしての本題です。豪華で美しいのは本音ですが、そもそもなぜ光らせるのでしょうか。光らせれば常に良くなるのでしょうか。まずは具体例と共に意図を2つお話しし、最後に私なりの考えをお伝えしましょう。
但し、アートの意図への説明には無粋な面もあると私は考えています。なので、ただ純粋に感じたいという方はこの先は読まず、ぜひ実物を感じていただければ幸いです。
パッケージ

彼女はそこにいます。だからこそ、そこにいるとはっきり伝える手段が必要だと考えました。
本作のパッケージは、真っ白の箱が内側から引き裂かれている瞬間そのものです。ゆえに内側と外側があり、それらを別物だと感じさせる必要があります。そのために私は内側を光らせ、外側をくっきりと白くして違いを強調しました。
ホログラム紙による虹色がかった光は異界の表現としても、悪魔の瞳により幻惑されるめまいのような体験としても働き、ふさわしい仕上がりになったと感じています。
手法としてはホログラム紙の上に、白版を2回重ねて白の厚みを出し、光る部分と光らない部分のコントラストを強調しました。その上で度を超えて光りすぎると下品になってしまいます。光る部分にも適度な薄さの白版も置き、さらにマット加工を重ね、光が柔らかく妖艶になるよう調整しています。
カード裏面、テーゼトークン

概念としての存在感と、ゲーム的な数えやすさが必要でした。
本作では「テーゼ」を、存在の内側、魂のようなものを流れる中核的なリソースとして扱っています。つまりはゲームで多用される重要な存在です。
ゆえに特別さと存在感を感じさせる必要があります。しかしテーゼは具体的な物質ではありません。食料や貨幣、桜の花びらなどのように形を与えやすくもありません。
同時に、ゲーム内で個数が重要です。テーゼトークンの数は常に重要で、カードは供物という領域に並べた際に枚数を数えやすい必要があります。
これらを解決するために銀の質感で強く光らせ、そこにあるという存在感を強調しました。手法としてはシンプルな箔押しです。
2つの例を終えて
第一に、この2つの例での共通点は強調にあります。つまり光らせるのは強調のための手段です。そして正しい強調にはコントラストが必要です。光っていることを強く見せるには、周囲に光っていない場所があるべきでしょう。まずそのように働けば、良いキラ加工になる。第一に私はそう考えています。
しかしそれ以上に、この手段は手札の一つであると意識することが重要だと考えています。強調は光らせなければできないわけではありません。コントラストは他の手段でも演出できます。
主な手段は色(色相)、色の鮮やかさ(彩度)、色の明るさ(明度)です。白地のフラットにビビッドな色を置く。ダークな黒に白で描く。周囲を白くして、淡い桜色を目立たせる。できることはいくらでもあります。光沢への安直な依存は不健全です。
その上で『ドリームテーゼ』は悩ましさがありました。意図した空気をグラフィックから生むために色相を制限し、彩度を抑えると定めていたのです。鮮やかな色は厳格なルールでしか使えず、明度での強調を多用しすぎれば画面が混乱し、しかし控えればどこか地味さが生まれてしまいます。
だからこそ第4の手段として、光沢のコントラストを使うべきだと判断しました。今ではその他の要素が抑制されているからこそ、光沢そのものより際立ったと評価しています。パッケージ、トークン、カード裏面のいずれも、光っていないところがほぼ白や黒だからこそ、光沢が強調されています。結果として『ドリームテーゼ』はキラ加工と特に相性のいい作品だったと考えています。
改めて、カードを光らせ、豪華にするのは楽しいものです。その上で表現したい目的を意識し、光沢のコントラストを手段として捉えてみると、より奥行きのあるデザインに繋がるかもしれません。もしあなたがゲームを作っているのなら、参考になればうれしい限りです。
そしてここで説明したアートの工夫はほんの一部です。今回のグラフィックにはグラフィックデザイナー、あるいはアーティストとしての私の新しい挑戦が目一杯つまっています。ぜひとも見た目の面でもお楽しみいただければ嬉しい限りです。
謝辞
最後にこの場を借りて、本作でアシスタントプロデューサーを務めたZUMEさんに深くお礼申し上げます。
ZUMEさんはプロデューサーを務められた『EAT/PAINT』『妖隠 -アヤカクシ-』などの経験から、コンポーネントを光らせることについての深い知見をお持ちです。本作は様々なところでお力添えを頂きましたが、特に今回の加工表現はZUMEさんのお力が無ければ成立せず、たいへん多くのことを勉強させていただきました。ありがとうございます!
