碩星楼ブログ
【デザイナーズノート】悪魔との契約で目指した体験

【デザイナーズノート】悪魔との契約で目指した体験

Author: BakaFire

 剣に焦がれ、悪魔に囁かれた闘士よ。
 白き夢の入口へようこそ。
 この連載ではBakaFireのデザイナーズノートを通し、『ドリームテーゼ』の断片を幾つかお伝えします。

 

 本日のテーマは「ドリームテーゼが目指した体験」です。

 「デッキを強くするほど苦しくなる」「壊れながら、殺しきれ」「悪魔と共に薄氷で踊れ」などと本作は述べていますが、それは何を目指した体験なのでしょうか。

 

 前提として『ドリームテーゼ』は悪魔契約ボードゲームです。悪魔に囁かれ、契約を繰り返しながら戦いを繰り広げ、自分が壊れるより前に相手を打ち破る。そんな対戦ゲームであり、対戦ゲームとしてのかけひきは当然として成り立っています。その上で何にこだわったかをお話しいたします。

 それは悪魔に本当に囁かれているような存在感です。

 悪魔はあなたを戦いに誘い、戦いの中で契約に誘い、そして悦びと破滅の境目に向けて誘惑します。勝利に必要な力であると同時に、敗北に導くリスクでもあります。そのような悪魔としての気配をボードゲームの中で限界まで引き出し、遊んでいる時に本当にそこにいて、自分と悪魔の間に深い繋がりがあると感じられるようにこだわりました。

 

 では、具体的にどういった肉付けをしたのでしょうか。
 前提はあなたと悪魔の位置づけです。悪魔はいわゆる操作キャラではありません。戦うのはあなた自身であり、悪魔はそんなあなたに囁きかける存在として現れます。

 そしてルール面の肉付けこそが「デッキを強くするほど苦しくなる」という構造です。

 悪魔の力でデッキが強くなるだけでは、魔性に囁かれる気配も、深い繋がりも感じられません。大体の場合、ゲームを有利にするための装備カードがキャラクターの姿を取っているだけに見えてしまいます。思い通りになるだけでは悪魔らしくなく、そもそもそれ以前に独立した存在だとは感じられないのです。

 悪魔には「頼もしい力強さ」と「信頼しきれない危うさ」の両立が必要です。ルールの動作を通して実際にこちらを振り回してくる、頼もしくも厄介な存在。そう感じられてはじめて悪魔としての肉感が宿ると私は信じたのです。

 ここまでを踏まえ、ルールの要点だけを紹介しましょう。初期デッキは人間のカード7枚と、共通のデモンカード1枚から始まります。

かけら1

 本作では毎ラウンド3枚のカードを出せなければ敗北します。しかし、カードを出すためのリソースは徐々に減り、放置すれば敗北します。

 生き延びるには悪魔との契約が必要です。契約すればリソースを回復でき、強力なデモンカードを得られます。

かけら2

かけら3

 しかし代償として人間のカード1枚を捧げなければなりません。そして人間のカードは人らしさを保つためにも必要です。回復したリソースを、再び戦いで使えるよう装填する役割を担っているのです。

かけら4

 つまり、契約を重ねるほどにデッキは強くなりますが、デッキ内でのデモンカードの割合が大きくなった分だけ本当に使えるリソースはむしろ減っていき、敗北を避けるのが苦しくなります。

かけら5

 想像してみてください。契約を繰り返すほどに、悪魔と関わるほどに自分が変わっていきます。頼もしい性能のカードが手札に来て、強くなったと心地よく感じます。しかし遠くない先にある破滅もまた、少しずつはっきりと姿を現してくるのです。

 きっと対戦を通し、彼女との関係に何度も悩むでしょう。いつ契約し、どこまで力を借り、どうやって共に勝利を目指すのか。その選択は、対戦するあなた自身に委ねられています。その先で、本当に囁きと繋がりを感じ、彼女をただのカードとは思えなくなる瞬間があるかもしれません。

 

 『ドリームテーゼ』を通し、そんな体験をぜひ味わってみてください。危険な相棒――悪魔はすでに、あなたに囁いているのですから。